その4。思想無き、サイケデリック。


 テレビ放送だが、やっと「崖の上のポニョ」を観ました。
 これ、
 さすがにオッサンが観たくなるよーな題材でもないし、
 ジブリで云えばトトロ系の作品かなと、高をくくるわけではないが、
 まあ、想定の範囲内だろーと。
 んが。
 まさかこんな映画だとは思わなんだ。驚愕であった。
 しかもこれが大ヒットを記録したとゆー事実。
 ホントに、これはいままで伝え聞いていた「ポニョ」なのかと。

 まず、写実でないことはすぐにわかる。
 人面魚とゆー言葉もでるので、
 それが奇怪なものとの認識はあるが、同時に存在を認めてもいる。
 これでこの作品は寓話的であり、絵本に近いものだと推測できる。
 まあ、この絵柄だし。

 次に、キャラクターの描写。
 これがあまり深くない。断続的でもある。
 あくまでキャラの魅力とはべつの、感傷や関連性の話だが。

 そしてストーリー。
 これもまたすぐにわかることだけど、物語がない。
 要してしまうと、人魚姫の、つまり古典である。
 それも、よりシンプルな方向へアレンジされているし、
 間延びさせないために構成が分断されている。積み木みたいに。

 総合的に云ってしまうと、やはりこれは絵本なのだ。

 しかし絵本と云えど、侮ってはいけない。
 子供向けとは限らないし、
 多くの絵本が、
 そこに示唆として道徳や教訓、テーマ、メッセージが盛り込まれているのが常である。
 例えば、
 人間になりたい魚、人間をやめてしまった男、
 母の存在、巨大化した月、魔法、などなど…。
 暗喩は掘ればいくらでもある。
 それこそあからさまに散りばめられている。
 しかし。
 やはりこれも断片的なのだ。
 深く、重くなりそーになると、ぱっと次の展開に移ってしまう。

 つまり。
 これはあくまで個人的な感想なのだが、意味があると見せ掛けての、二重の罠。
 じつはなんにもないんじゃないのかな、「ポニョ」わ。

 この何も無さが、衝撃でした。
 あの、宮崎駿が、何もないものを創る。
 「風の谷のナウシカ」で、
 清浄された世界で、人類は血を吹いて絶滅するだろうとか描いた人が、だ。

 物語がなく、テーマもなく、キャラもいない。
 だが、そこに意味がある。
 そんなアンチイズムで貫かれた作品の意味とは、「手書き」じゃないかな。

 しつこいけども、
 宮崎駿が、ただそーしたい、やりたいが為に、
 あらゆるものを削ぎ落とし、作品を創るってのは、前代未聞とゆーていいでしょう。
 実際はどーかしらんけど。

 邪魔なものを脱ぎ捨てて裸になった天才が、
 その才能と衝動で描いた「崖の上のポニョ」は、素晴らしい作品だとおもいます。
 それに、
 たぶんこれ、ジブリ版のイエローサブマリンとして捉えるべきだと、おもう。
 ストーリーだけじゃなくて、声も要らないし。



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Commented by とろゆむZ at 2010-02-06 22:55 x
同意。
ポニョはほんの少し前、かなり適当な気持ちで観たのですが、
なんだか、大きなショック受けちゃいましたよ。
んで「自分でもまるで理由のわからない涙」を流すという、
壮絶な経験をしたですよw
今思うと、あの映画、めちゃくちゃこええよ。
Commented by y.k-ybf at 2010-02-09 21:15
この怖さって、子供が感じる曖昧な恐怖なんだよね。しかも、それを大人でも解りやすいよーに、魚顔とかにしている。意図的にやってるのが、ほんとにすごいとおもうよ。ついでにもっと言わせてもらうと、前半でお客さんを仕分けてる。楽しめる人と楽しめない人とを。ネットでチャットしながら観てたんだけど、まー、見事に意見や感想がバラバラになった。おれは興奮しながら観てたけど、もうジブリは二度と観ないとか、恋愛モノと捉えたりとか、とにかく所々でそれぞれ引っ掛かるんだわ、これ。
by y.k-ybf | 2010-02-06 21:44 | 映画/100 | Comments(2)

むしろ、レコード・プレイヤー、の、ようなもの。


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