その89。『座頭市 THE LAST』

座頭市 THE LAST 豪華版(2枚組) [DVD]

東宝



 地雷だと
 分かっていても
 踏んでいる


 香取慎吾が主演の、最後の座頭市映画、『座頭市 THE LAST』。
 座頭市とゆー厄介な題材と、年々演技が粗くなるシンゴーが組合わされれば、
 それは凄まじいことになるだろーと素人でも予測できそーな、コレ。
 しかし、
 意外と云ったら阪本順治監督には失礼なのだが、これが悪くはなかった。
 時代劇としてよく仕上がっているし、
 仲代達矢のヤクザの親玉は、不気味な恐ろしさがあった。
 悪役側の役者さんもクセのあるいい感じでした。
 岩城滉一の情けない親分も、これはコレでアリかなと。
 ただ、
 シナリオはちょっと問題がありまして、演出もそこをまったく補えておりませんでした。

 しつこく説明されても困るけど、掘り下げ描写も浅いので、
 何でそーなったのか、オマエ誰なんだって疑問がつねに湧いてくる。
 市の、生まれ故郷が廃村になってたとか、
 重要な役割の昔馴染みとの再会とかが、あまりにあっさり描かれるので、
 「あれ? 週1ぐらいには帰って来てたのかな」と、おもってしまう。
 全体的にキャラ立ちも甘いので、とにかく名前と顔と役割がはっきりしなくて混乱する。
 もっと極端になると、映さないんだな、この監督さん。
 映さないとゆーか、
 実際、本当に役者が消えちゃうシーンもあって、ビックリしましたよ。
 んで、
 ラストの、市をランニング刺殺する奴。
 オマエ、誰や!? と。

 しかしまあ、どちらかとゆーと脚本家にも責任はあって。
 伏線がありそーだったり、意味ありゲだったり。
 そんなんばかり散りばめられているのに、
 結局、たいして広がらないし、回収もしない。
 市の妻役の石原さとみなんか、オープニングのタイトルが出る前に出番終わっちゃうし。
 しかもこの映画、133分もあるの。
 二時間以上。こんな状態で何がそんな詰まっていたのかと。
 不思議なので、おもわず計三回も観てしまったよ。

 んがだ、
 それでもまだこの映画の元凶の前では、キュートなミステイクと、笑って許せるレベル。
 この世界観が崩れることはない。
 元凶とは、
 即ち、主演の香取慎吾である。
 完全なる映画破壊者として、降臨されておられる。

 予め云っておきますと、
 シンゴーのことは嫌いではないし、
 役者としても、
 こち亀や西遊記やハットリくんや慎吾ママやらは論外で、当たり外れも多いが、
 悪い印象はなかった。
 確かに。
 確かに、過去の座頭市のイメージを重ねるべきではないとおもう。
 彼は勝新ではないし、タケシでもないし、綾瀬はるかでもない。
 設定も変更されているよーだし、
 やはり若く見えるし、神懸かりな強さってわけでもなさそうだ。
 だけどな、と。
 そこまで分かっていながらも、
 やはりこれは座頭市の映画で、誰が演じよーと、そこにいるのは座頭市でなくてはならない。
 それでも別物とゆーならば、看板を代えるべきだったのでは、ないかなぁ…。
 もう、ね。
 映画始まってすぐにシンゴーの座頭市が出てくるんだけど、ビジュアルが酷い。醜い。
 手足は長いわ、童顔だわ、
 お肌ツルツルだわ、体はデカいわ、小綺麗だわ、声が甲高いわ。
 若々しいとゆーより、幼いし、なのにエネルギッシュさが無い。
 動作も素早いわけではないし、殺陣が決まってるわけでもない。
 そもそも刀の扱いが雑で、抜きがヘタなら、収めるときもモタモタモタモタやっている。
 「本当は見えているんじゃねえか」なんて台詞があるが、冗談に聞こえなかったわ。
 何から何まで座頭市に当てはまらない。
 当てはまらないのなら、当てはまらない座頭市を演じればいいのに、
 過去の座頭市を意識したよーな演技をしている。

 そんでこれはシンゴーだけのせいではないけど、血が出ない。
 斬っても斬っても血が出ない。
 腕を切り落としても出ない。喉を斬ってもちょろっとしか出ない。
 白い敷物の上だろーと、色が映えそうな雪だろーと。
 血が出ないことが悪いわけではない、
 それも演出の一つである。
 しかし、血は出ず、殺陣もゆるいと、迫力がない。
 迫力がないと痛みが伝わりにくいし、命の重みもぼやけてしまう。
 単純に、斬られたのかも、死んだのかも分からなかったりするし。
 これが「水戸黄門」などTVドラマの時代劇なら気にもならないだろーが、
 これは「座頭市」であり、
 何よりクライマックスは、座頭市の死なのだ。
 ならば、血を出せとは云わないが、もっと考慮が必要だったんじゃないかなぁ。
 冒頭の、死別する妻とのエピソードとも共通してるんだけど、
 なんとも口当たりだけがよく、薄い。
 薄い、イメージビデオみたいな、映画でしたわ。

 二時間以上の。
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by y.k-ybf | 2012-03-02 10:32 | 映画 | Comments(0)

むしろ、レコード・プレイヤー、の、ようなもの。


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