『ステキな金縛り』を、観た。


ステキな金縛り Blu-rayスペシャル・エディション(特典DVD付3枚組)

東宝



 三谷幸喜の作品は、好きだった。
 映画を撮るよーになるまでわ。
 ドラマはよく観ていたし、
 テレビ放映された東京サンシャインボーイズの舞台なども、
 こんな面白いものがあるのかと、感激しながら観ていたものだ。

 三谷幸喜は、
 古典をふまえつつ、それを逆手にとって、新鮮なものに作り替えるセンスと、
 安定した上品さをキープしつつ、時にはアバンギャルドに振り切れるユーモアのパワーがあった。
 それを目まぐるしく二転三転するストーリーに組み込むことで、
 観客をトリップさせるよーな、独特な三谷ワールドを形成していた。

 そんな三谷幸喜が映画をやりますよーってなったとき、
 何故か、なんとも嫌な予感を感じて、スルーしてしまった。
 実際、映画を観ることになるのは、監督デビューからだいぶ後で、
 何を観たのか、タイトルも定かではないぐらいなのだが、
 やはり、
 ああ、まあ、おもしろいですね、程度の感想しか湧かなかった。
 予感通りに、何かが違う、何かが足りないものだった。
 それからいくつかドラマや映画なんかを観てきたが、その喪失感は深まるばかりだった。
 そんで、
 ある時、宇多丸さんの三谷評を聞き、やっとその何かに気がついた、よーな気がした。
 あ、そーか、
 三谷幸喜って、おもしろくないんだ。それ、言っちゃっていいんだ。おもしろくなくなってんだ、と。
 だから楽しめなかったのか、と。
 何をアホなこと言ってんだとおもうでしょうが、まー、こんなこともありますよ。
 好きなものが嫌いになれない、とかね。

 さ、
 そんなマインドのコンディションで観た、『ステキな金縛り』。
 宇多丸さんのハスリングもすでに聞いてしまい、
 かなら期待値も下がり、どれだけボロクソ言えるかなと挑んだわけですが、
 これが、おもしろかったのです。
 楽しめました。
 ちょっとハードル下げすぎちゃったかなともおもいましたが、観る価値無しってほどではないですよ?
 確かに、ヒドいところはたくさんあるけども。

 まず、設定が、ブレまくってる。
 幽霊が見えても、基本、一体だけだったり、だけじゃなかったり。
 あの世とかこの世とか、
 非現実で常人には未知のものを出す場合、設定こそがしっかり固定されてないと駄目なのだが、
 そこがブレてるから、よくわかんないことに、つまり、ストーリーに説得力がなくなっておるのだ。
 個人的にヒドいなーとおもったのは、
 阿部寛が演じた主人公の上司の突然死。
 あ、体調悪かったんだ?
 え、死ぬの? 今? みたいな感じで亡くなるんだけど、
 これ、いくらコメディだからって、あまりに扱いが粗略すぎるし、意味もないのが、ヒドい。
 要するに、
 コメディとしての体も守れてないし、映画としても歪つなんだわ。
 これが映画を撮るよーになってからの、
 つまりは名前が売れて有名になってからの、三谷幸喜の劣化したところなんだわな。

 そんでまた、長いんだ、この映画。
 二時間半もあるのよ、150分!
 内容が詰まってるわけでもなく、明らかに無駄だとわかるシーンばかり。
 進行もダラダラしてるから緊張感なんかないし、テンポも悪い。
 繋ぎも雑。
 しかも、ストーリーの大きな着地点の一つでもある、
 西田敏行演じるところの、
 落ち武者の悲願、名誉挽回と慰霊碑による成仏が、驚くべきことに、本編では描かれない。
 準主役級のキャラなのに!
 スタッフロールで完成した慰霊碑の写真が、一応出るけれど、そんな扱いなのかと。
 んで、
 主人公のその後とかもスナップで一緒に流されるけどもー、落ち武者、ぜんぜん成仏してねーの。
 いままでの話は何だったんだよ!
 なんでもアリかよ! ってゆーか、どーでもいいのかよ! と。

 そう。
 この『ステキな金縛り』って映画はね、
 どーでもいいわいって、三谷幸喜が頭をぱっくり開いた状態で作ったとしかおもえない映画なの。
 オレの頭の中を覗いてくれよって。
 そこに辻褄とか洗練とか、あるわけないし。
 まずね、
 あのオープニング、ミニチュア丸出しでアニメかと錯覚しそーになるお屋敷のシーンを観れば、
 どのレベルで鑑賞すべきか、わかるんじゃないかな。
 主人公を演じる、深津絵里の演技だって、
 おそらくたぶん、意図的に過剰さをアピールした、
 誰も感情移入できない切れたキャラにしたんだとおもいますよ。おそらくたぶん。
 これは狂った映画なんだと、気付かせるために。

 個人的には、戸田恵子のイヤな女将役がよかったなぁ。
 ホントに、嫌々しいのが。

 と、ま、そんなわけで。
 観る際には、頭のネジが弛まった、
 そーですね、心地よく疲労したぐらいの時に、観るのがオススメですよ。

 長いけどね。
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by y.k-ybf | 2012-09-03 10:34 | 映画 | Comments(0)

むしろ、レコード・プレイヤー、の、ようなもの。


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