『BANDAGE バンデイジ』、を、観た。


BANDAGE バンデイジ 豪華版DVD 2枚組 (本編DVD+特典DVD) <初回限定>

バップ



 監督、小林武史。プロデュース、岩井俊二。主演、赤西仁。
 この、錚々たる顔ぶれ。
 麻雀なら跳満ぐらい役がのっている状態である。

 ロックバンドのボーカルが、
 バンドのファンの女の子に手を出して、追い回したり連れ回したりしてるうちに曲がかけるよーになり、
 それがチャートの一位にもなるけど、
 バンドのメンバーからは、その女の子のせいでバンドが滅茶苦茶になったから別れろと迫られ、
 女の子と別れるけどバンドも解散しちゃう、
 えっ? ってゆーお話し。
 なんだコレと自分でも書いてておもいますが、たぶん、間違ってはいないはず。
 因みに、
 この世間ではグルーピーとか呼ばれる女の子を、北乃きいが演じております。

 さて、映画の本編に触れる前に片付けておかなければならないのが、
 『バンデイジ』の舞台となる、九十年代前半バンドブームとゆー時代設定。
 そもそものバンドブームとは、八十年代後半から九十年代前半にかけてのこと、らしい。
 明確にすると、ま、85~95年辺り。
 しかしBOØWYの解散が、87年。
 バンドブームの象徴とも云える「イカ天」が89~90年(わずか二年!)。
 次の大きなブームとなる、渋谷系ブームが93~96年らしく、
 コーネリアスのファースト、
 オザケンの『LIFE』、
 ハイスタのデビューが、共に94年ってことからも、
 おそらく93年頃にはバンドブームも沈静化していたとおもわれます。
 ブームを牽引したと云えるユニコーンは、93年に『スプリングマン』を発表して、解散。
 ザ・ブルーハーツは、95年にラストアルバムの『PAN』を発表するけど、すでに解散状態だったし。
 唯一、ジュンスカだけは97年まで活動を続けておりますね。
 そいや関係ないけど、
 この3バンドにTHE BOOMを加えて「バンド四天王」だとかWikipediaに載ってたけど、
 そんな括り、初耳。
 当時は誰も言ってなかったとおもわれるので、気を付けましょう。
 と、
 話を戻しまして、
 BOØWYの解散前にブームはなかったし、そのあとに渋谷系もあるので、
 期間は、88~93年までに絞られます。
 そんで、KANの「愛は勝つ」が90年。
 槙原敬之のデビューも90年で、翌年の91年に「どんなときも。」でブレイクしている。
 実際、大きなムーブメントにはならなかったけど、
 この時期、バンドブームと渋谷系の間には、
 シンガーソングライター・ブームとネオアコ・ブームってのがあったと、記憶している。
 渡辺美里、大江千里、辛島美登里、
 高野寛、オリジナル・ラブ、フリッパーズ・ギター、とかね。
 だからバンドブームの陰りってのは、もっと早かった可能性もあるな。九十年代初頭とか。
 ま、一般的な感覚としての話だけどね。
 あ、
 小林武史がプロデュースする、みんな大好きMr.Childrenは、92年のデビュー。
 こーしてみると、如何に微妙な時期にデビューしたのかが、分かります。


 さて、やっと映画の話。
 長々とバンドブームの説明をしたのも、時代背景の確認のためで、
 劇中で明確な限定はされていないけど、
 バンドのコンテスト番組が途中で終わった云々って台詞があるので(おそらく「イカ天」的な番組だとおもえる。)、
 ブームも終わる直前直後あたりだろう。90~92年ぐらいか。
 赤西仁君が所属するバンド、「LANDS」は、確かに当時のバンドっぽさがあるかも。
 技術的にあまり巧くないのに、人気だけはあるとか。
 ただ、キーボードの扱いはちょっと微妙で、
 アナログシンセやサンプラーを当たり前に使ったりと、
 ロックバンド(オレたちロックだぜ、とか口走ったり、ファックサインしたりするタイプの、ロックバンドね。)では、
 まだ珍しかったんじゃないかなぁ。
 電気グルーヴの『VITAMIN』は93年。
 ストーン・ローゼズやマッドチェスターはもっと前だけど、
 バンドの曲がサイケでもなければダンス系でもないし。
 歌詞も、メッセージ色があります風の、ぼやっとした感じだしー。
 このあとになって出す曲なんかは、
 完全に癒し系入ってて、それはそれで時代的に少しズレている気がしたし。

 で、
 インディーズなのかな?
 LANDSってバンドはけっこう人気がありまして、
 北乃きいが友人役の杏と一緒に、ライブのバックステージへ潜り込むんですよ。はしたないですね。
 そこでバンドのメンバーと知り合い、
 赤西君とも仲良くなり、
 車で連れ回されーの、部屋に連れ込まれーの、
 交換日記をやらされーの、バンドのリハーサルにも呼ばれーの、
 もー急激に付き合いが発展しまして、二人の距離が強引に縮まっているのが、バカでもわかります。
 キスはしないけど。
 あ、友人役の杏は、ほったらかしで、最後まで出番は無くなります。
 で、なんやかやで、
 北乃きいはマネージャーの手伝いみたいなことをしながら、
 高校卒業後、就職して正式なマネージャーになります。
 キスはまだしません。
 この赤西君、
 チャラチャラして何も考えてなくて、いい加減を絵に描いたよーなバンドマン風の男なのだが、
 女性に対しては、ちゃんと節度を守る方なのですね。
 キャラ的にはむしろ不自然な気もしますが、紳士で素敵です。
 そしたら、
 いままで作曲とかしたこともなかったのに、突然、作れるよーになりまして。
 愛の力かな? スゴいですね。
 出来上がった曲のタイトルが、「元気」。
 仮にもロックバンドの、
 歌うときにもフード被って気だるそーにしてるボーカルが作った曲が、「元気」。
 歌詞も、「♪元気、元気、元気~」(歌詞そのまま)ってゆー、
 背骨が凍りつきそーなガンバレソングで、完全に何かを誤ってる気がしますけど、
 チャートでは一位になります。
 きっと、この国はみんな病んでるんだな。素敵。
 続けとばかりに赤西君、また曲を作ります。
 「勇気」。
 次のシングルのタイトルは、「勇気」なのです。
 しかしこれがチャート四十位以下で、ぜんぜん売れません。
 速攻で飽きられます。 素敵!
 二番煎じなことやりやがってと、スタッフたちも怒りますけど、
 イヤイヤ、お前らが無能なだけだから。
 不祥事レベルの落ち方だろ、コレ。まだキスもしてないのに。
 そして何故か責任の矛先は北乃きいへ向けられて、
 さらに何故か、
 ギターのヒトとキスします。その場の雰囲気で。
 当然、バンドは滅茶苦茶になりますよね?
 だって、ギターのヒトが、ボーカルの女に手を出しちゃったんだから。

 キーボードのヒト(女性)は、別れろ別れろ言いますが、
 そもそもこの方、口が悪くて、いちばんバンドの空気を悪くしてる張本人。つか、サポートメンバーだしなぁ。
 ベースのヒトは、
 一位とったらもーやることがない、とか言って辞める気まんまんだし。
 ドラムのヒトは、ワイルドなキャラだけで存在感無いし。
 バラバラっちゃ、ずっとバラバラなバンドで、
 よく売れたなってゆーか、よくここまでやってこれたなとおもいますが、
 赤西君はやっと北乃きいとキスをして、バンドは解散します。
 あ、セックスはしません。
 真面目なイイ子です、赤西君!

 さて、その後どーなるかとゆーと、
 まったく出番もなく、忘れていいキャラかなとおもっていた友人役の杏と、ばったり再会します。
 道路工事で警備のバイトをやってました。すんごい違和感、醸し出しながら。
 杏は、バンドも始めていました。
 バンドの名前は、ハッピーズ。 死ね!
 このバンドは、おそらく時期的にもおかしくない、
 何かを悟ったかのよーな女が、優しい言葉を並べた教訓風な癒し系ロックバンドで、それっぽかったです。
 売れたらすぐに解散して、ソロデビューしちゃいそーな感じとか。
 で、
 マネージャーやってた会社も辞めてプラプラしてたからか、
 バンド(ハッピーズ)を気に入ったのか、
 北乃きいが、マネージャーやるーとか言い出しまして、あっとゆー間にデビューさせちゃいます。
 敏腕です。
 しかしこの、北乃きいと杏の二人って、
 付き合いは長そうなんだけど、まるで親密さが伝わってきません。
 見失わないよーに友人役と書き加えてきましたが、この冷めた感じがたまりません。
 そして、
 ついに、赤西君と…。
 とゆーエンディングになるのですが、それは、観てからのお楽しみ。

 つかね、
 あらすじをざっと書いてみましたが、ここまで読まれた方はお気付きだとおもいますけど、
 ナニコノ話? っ感じでしょ?
 ほんっとに、山も谷もない映画なんだな。
 ロックバンドがデビューしたらすぐに解散したってだけで。
 や、そりゃ当人にはドラマチックなことだろーけど、
 例えば、苦悩するとか努力するとか、困難や葛藤があるとかさ、そーゆーの描いてないんだもの。
 悪役もいない、ライバルもいない、障害もない、目標もない。
 ずっと平坦。
 その象徴的なのが北乃きいで、
 この子が何を考えてるのか、想ってるのか、感じているのか、よくわからない。
 一応、最後の方で、北乃きいと赤西君が、
 気弱で何もない自分が大嫌い、似た者同士だねって、打ち明け合う場面があるんだけど、
 赤西君がカラッポなのは、出てきてすぐに、観客もわかることだからなぁ…。
 北乃きいは、
 狂言回しとゆーか、基本、受け身で「そうですね」って言うために存在してる、感想係みたいな位置。
 雰囲気でキスするぐらいだから。
 ま、そんなんで自分が嫌いなんだろーけど、
 それが具体的に吐露されるのが最後の方なんで、
 結局、その問題が解決したのかも成長したのかもわからないまま、なんだなぁ。


 んじゃ、コレはなんだったのかと改めて考えてみると、
 小林武史からの、音楽シーンに対する辛い批判ではないか、と。

 まず、LANDSってバンドが、まったく魅力的に描かれていない。
 演奏が特別巧いわけでも、個性的なイメージがあるわけでもない。
 曲が詰まらないとかボーカルがヘタとかは、とりあえず置いとくとして。
 そんなバンドが支持されて、
 「元気」みたいな間の抜けたガンバレソングが「ロックバンド」の曲として、チャート一位になってしまう。
 そしてそんなバンドのファン代表として、自分嫌いでカラッポの北乃きいがいる。
 この表層だけで成立している光景こそが、日本の音楽シーンそのものだと。
 小林武史は、そんなメッセージを込めているんじゃないかな。
 そこまで計算しての、コレだと。
 劇中、
 オーラって言葉が当たり前のよーに乱用されてまして。
 お前にはオーラがない、アイツには本物のオーラがあるとか、
 真顔で言い争ったりするので、北斗の拳みたいな世紀末バトルが始まるんじゃないかとヒヤヒヤしましたが、
 これもまた、実態のない空虚さを表してますね。
 (オーラに関しては、ナニソレ? と否定する人物もいるんだけど、
  これが「才能がある」ってキャラなのも、抜け目ない。小林本人の投影かな。)

 とゆー二層仕立ての意地が悪い映画だと推測されるが、じつは仕掛けのバラしも用意してあって。
 最初の方、
 友人役の杏がバイトしてるCDショップに、北乃きいが訪れるシーンがあるんだけど。
 そこで流れているのが、フィッシュマンズの「MAGIC LOVE」。
 フィッシュマンズのデビューは90~91年なので、時代設定的には矛盾してないが、
 「MAGIC LOVE」の発表は、97年。
 「ナイト クルージング」や「SEASON」よりも後の曲が、
 ま、デモとして存在してた可能性はあるけど、お店では流さないよな。

 要するに、このデタラメがある世界。
 コレの舞台は「昔」だけど、「今」の話をしてますよ。
 「今」もコレなんだよーって、意味なんじゃないかと、勘ぐってみました。

 小林武史の地雷的野心作かと。
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by y.k-ybf | 2013-02-06 10:57 | 映画 | Comments(0)

むしろ、レコード・プレイヤー、の、ようなもの。


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