ある時代の音楽映画。『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』、『ノー・ディレクション・ホーム』、『ジャージー・ボーイズ』。三本。
2015年 09月 06日
一人のフォーク・シンガーの、
不本意な日々に翻弄される、一週間が描かれている。
とはいかないのが、コーエン兄弟の映画。
どーせ今回も古典教典やらが題材として忍ばせてあるんだろーなとおもっていたら、ネコの名前が「ユリシーズ」。
その辺の解説は町山智浩さんが「ムダ話」で詳しく話してるので全スルーするとして。
この、
ルーウィン・デイヴィスには、モデルとなった人物がおりまして。
それがデイヴ・ヴァン・ロンクとゆー、フォーク・シンガー。
50年代後半の(二度目の)フォーク・リバイバルで活躍された、
知る人ぞ知る、とゆーにはあまりにも有名な方。だそーで。
この映画だと陰鬱な印象や、
寒々としたシーンばかりが強調されるけど、実際はだいぶ異なるみたいですよ。
フォーク・ソングの話でゆーと、
61年ってのは前述のムーブメントがあり、フォーク・シーンも活気があった頃。
そこに現れたのが、映画でも描かれている、ボブ・ディラン。
彼の登場により、
民謡やトラディショナルが中心だったフォーク・シーンは、
そんな事情を知っていると、
この映画の結末が如何に皮肉めいたものか、理解できるだろう。
パートナーを失い、長くツラい時期を迷い、
やっと満足な演奏ができたとステージを降りると、もうそこには次の時代を築く男がいるのだ。
暗いトンネルを抜けると、
その先には、
次のトンネルが見えるだけだった。
じつにコーエン兄弟らしい映画だなと、おもいましたよ。
主演のオスカー・アイザック本人による演奏も、見事でした。
この映画に合わせた、
「Another Day,Another Time」、
オスカー・アイザックも映画のナンバーを生演奏したり、
ゲストにジェーン・バエズなども出演したりと、
そして、
更にこの流れでマーティン・スコセッシが監督した、ボブ・ディランのドキュメント映画、
『ノー・ディレクション・ホーム』も観た。
この映画はボブ・ディランのデビューと、
「フォークの新星」と絶大な支持を集めながら、
バンド編成の曲作りへ移行したことで、強烈なバッシングを受けるに至るまでを、克明に描いている。
デビューの時期は、丁度『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』の時期と重なるし、
何より、
デイヴ・ヴァン・ロンク本人が、当時とボブ・ディランについて語っております。呑気に。
この二作を比べると、
冒頭に、ボブ・ディランが「これはオデッセイだ」と云ってるのも、「ユリシーズ」と繋がって興味深い。
例の有名な、
「ユダ事件」の映像も含まれているので、ロック好きとゆー方は必ず観てくださいな。
しかし。
新たな時代の寵児となったボブ・ディランも叩かれて、
その後、バイク事故で一時的に表舞台から退くこととなるのだから、
時代の流れとゆーのは、判らんもんだな、と。
因みに、ビートルズがデビューしたのは63年だから、ちょっと後になるわけだ。
そして。
また同時期に、別のシーンで活躍していたのが、
ミュージカルを基にして、その活動の記録を映画化したのが、
イーストウッド監督の、『ジャージー・ボーイズ』。
ま、
そんな『ジャージー・ボーイズ』。
ミュージカルのテンポの良さを活かした語り口は、
そのまんまやないか、とゆー批判もあるが、
ベストと云えるほど効果的に使われているので、致し方ないかと。
この映画に関しては、
だってね、
曲のパワー頼りのストーリー展開だし、
クライマックスの「あの曲」も、殆どソロのわけだし…。
只、
ラストからの演出は、
映画らしい演出で、とても良かったとおもいます。
イーストウッド作品のイメージとは、また一味違った映画で、
爺さんやるな、