あの鐘を鳴らすのは。『クリード チャンプを継ぐ男』。


 「ロッキー」の新作が作られるとゆーニュースに期待はなかった。
 (最初はアポロの「娘」だったよーな記憶もあるが。。。)
 最期の最後だった前作『ロッキー・ザ・ファイナル』が奇跡的な快作だったし、
 世間の評判は芳しくない『リベンジ・マッチ』も、
 個人的には「もう一つの完結編」としてアリだとおもっているので、
 蛇足な一作にならないかと、不安の方が大きかった。

 しかしコレがねー、
 感動的な一作になるのだから、判らないものでございます。

 年老いたロッキーの姿には、
 どこから語るべきか迷うほど様々な想いがこみ上げてくる。
 あの心優しいチャンプが今、
 家族も友も亡く、思い出の街フィラデルフィアに独りで暮らしている。
 愛妻エイドリアンと、いつも手を焼きながらも兄のよーに慕っていたポーリーのお墓を訪ねるシーンは、とくに感慨深い。
 おそらく日課のよーに、彼はこの場所へ足を運んでいるのだろう。

 ロッキーのレストランや、ミッキーのジム、
 雑多なフィラデルフィアの街並み…と、
 シリーズを感じさせる場面がいくつ登場し、時の流れを映し出す。

 かつてのライバルの息子をボクサーに育てるとゆープロットは、
 シリーズに沿ったシンプルな内容で、
 つまり全編ノスタルジィ頼りな作品なのかとゆーと、そーではなくて。
 むしろ新章と呼ぶべき、フレッシュな物語なのですよ。

 アポロの愛人の子として生まれたアドニスは、
 母を亡くし一時期孤児となるが、アポロの妻メアリーに引き取られ、養子となる。
 不自由な生活から解放され、安定した人生も目前にありながら、
 彼の心はボクシングへと惹きつけられてゆく。。。

 父の存在、
 受け継いだ血の影響もあるだろーが、
 それだけではないことを、
 恋人となる歌手のビアンカに代弁させる構成が、素晴らしい。(当然、裕福な環境なども関係なく。)
 プロの舞台に立てば、
 次は偉大な父の存在が伝説として立ちはだかる。
 これはまさに現在の若い世代が抱えている問題そのもので。
 楽に暮らせる方法は他にもあるし、
 偉業なんてものは既に成し遂げられている。
 記憶と記録のアーカイブは満杯で、
 過去の遺産を再生し、焼き直すだけで十分な数字を生み出せる。

 それでも今、命をかけてやる意味などあるのか?

 そんな疑問にハッキリと、
 やるんだよ!
 と答えるのが、この『クリード』とゆー映画なのだ。

 壮絶な試合でマットに打ち倒されたアドニスが、
 薄れる意識の中、
 走馬灯のよーに巡り辿り着く、あの男の勇姿。
 満身創痍で立ち上がるアドニスの姿に、問うことなど何もない。
 ついに流れるあの旋律と共に、
 新しい世代へ、
 魂が受け継がれた瞬間である。



 (「ロッキー」の物語が繰り返され、受け継がれるだけではなく、
  スタローンと「ロッキー」の関係性や、
  ライアン・クーグラー監督や、亡くなられた長男のことなど、
  この作品に重ねられるものは少なくない。
  そこは町山智宏さんの解説に詳しいので、お任せするとして。

  76年に公開した『ロッキー』と、
  翌年の77年に公開した『スターウォーズ』が、
  奇しくも15年とゆー同じ年に、
  (形こそ違いながらも)新しく物語を再生させた偶然に、特別な想いを馳せるのでございますよ。

  映画って、フシギなもんだな、と。)


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Commented by チャック at 2016-01-12 21:34 x
おお、今回素晴らしいレビューですね!
Commented by y.k-ybf at 2016-01-13 19:50
 >チャックさん

 『クリード』が素晴らしい映画でした。
 シリーズの魅力だけに頼らず、
 若い監督の情熱と、
 新しい技術、演出がしっかり盛り込まれてるのもいいですね。
by y.k-ybf | 2016-01-11 23:46 | 映画 | Comments(2)

むしろ、レコード・プレイヤー、の、ようなもの。


by y.k-ybf
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