『この世界の片隅に』


 幻想的なタッチだからこそ、リアルが鈍く、冷たく伝わってくる。
 泣き叫び頭を下げれば、耳障りの良い言葉で相手も応え、許されるのか。
 そんなものは「ドラマ」の話で、ヒトはなかなか謝れないし、許せない。
 義理の姉けいこが、すずにつらく当たるのも、憎しみをむけるのも、それが人間の姿だからだ。
 ひっそりと、独りで泣くことしかできない。
 悲しくて泣き叫ぶヒトも、戦争反対などと口にするヒトもいない。
 判っていても、そんなことをするヒトなどいなかったのだ。
 のほほんと暮らす、すずの世界は、
 劇中の言葉を借りるなら、変わらない世界。
 見知らぬ土地へ嫁に来ても、食料が足りなくても、砲弾の破片が降り注いでも揺るがない、のほほんと暮らす世界。
 それが如何に、あの時代に、大切だったのか。
 こーゆー言い回しは好ましくなく抵抗もあるけども、
 戦争だか何だかでめちゃくちゃにされながらも強かに生きてゆく人々の姿(主に、女性たち)が、胸をうつ。
 玉音放送が伝える、終戦。
 「やっと戦争が終わったぁ」と、安堵するかとおもえば、すずは怒りに震えていた。
 「まだ生きている者はいる。負けてない。負けてないのに、負けろと言うのか」
 町を壊され、生活を焼かれ、愛するものを奪われて、
 負けろと云われて流した涙は、哀しみではなく虚しさだと思った。
 抗い続けても呑み込まれてしまう、深い虚しさに触れたよーな気がした。

 最期のエピソードは、いつもなら蛇足のよーに感じたかもしれないけど、
 コレは、心が救われたよーな気がしましたよ。

 真っ暗な町に、再び電気が灯る。
 世界の片隅に。


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by y.k-ybf | 2016-11-18 11:09 | 映画 | Comments(0)

むしろ、レコード・プレイヤー、の、ようなもの。


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