『華氏911』

華氏 911 コレクターズ・エディション
/ ジェネオン エンタテインメント
ISBN : B0001X9D68

 今さらではあるが、やっと観た。

 マイケル・ムーアは、ノリツッコミのヒトである。

 「銃っていいよね。
  バンバン撃つとストレス解消になるし、黒人だって怖いし。
  この前、
  真っ黒に日焼けした白人を、黒人と間違えて撃っちゃったけど、捕まらなかったね。
  イラクでの話だけど。」

 ってゆー、アレ。
 そして基本が、どーしてもアメリカンで、恐ろしく真面目なヒトなのだ。たぶん。

 「アホでマヌケなアメリカ白人」とゆー本を、映画よりも先に読んだ。
 内容はたいへんおもしろいものであったが、
 基本がアメリカンなジョークにまみれておるので、
 正直、個人的には退屈でつまらないものだった。
 「アメリカ」を糾弾してるのに、
 書いてる人間が「アメリカ」そのものだから。
 しかしこれが映像になると一変、
 とてもおもしろく、見応えのある作品になってしまう。
 彼の生真面目な「素質」と、炙り出そうとする奇妙な「世界」は、
 ミスマッチであるが故に絶妙な反応を生み出すのだ。

 『ロジャー&ミー』や『ザ・ビッグ・ワン』など、そのへんとてもよい。
 『ボウリング・フォー・コロンバイン』は、
 最後の「写真」以外、ホントにうまく、「意識的に」やれてるヒトだなとおもった。

 が、
 『華氏911』は、そのどれとも違った。
 いつも序盤、
 かるいジャブと(その体格からは想像もできない)軽快なフットワークで試合をコントロールしてきたマイケル・ムーアが、
 試合開始早々から、
 トドメに残してきたはずのギャラクティカ・ナントカをバシバシ打ち込もうと、
 躍起になっているのだ。
 だいたい、
 これは「映画」ではなく、「ドキュメンタリー」でもないのかもしれない。
 誤解を招くかもしれないし、あまり言いたくもないのだが、「プロパガンダ」に近い。
 (だからこそ、「映画」なのかもしれんが。)

 『華氏911』は、そのほとんどが情報の羅列だ。
 マイケル・ムーアが集めて並べた、ブッシュ家の姿だ。
 よく耳にした批判の一つに、
 「あくまでマイケル・ムーア個人の見解に過ぎない。」と言うのがあった。
 まったく正しいとおもうのだが、
 彼が本当に描こうとしているものの、それは半分でしかない。

 この映画は、
 「で、どうする?」と、
 問い掛けを含ませ、残し、少々唐突に、終わる。
 ジョージ・ブッシュの再選を阻もうとしているのは明らかで、
 「どうする?」と、問い掛けているわけだ。

 委ねられた映画の結末はまだ先だろうが、経過は承知のとおりである。
 万博へ、手作り弁当すら持ち込めなくなってしまった。

 『華氏911』は、
 マイケル・ムーアのキャリアのなかで、
 おそらくもっとも個人的な見解で作られた、「映画」である。
 そしていまでも、
 「で、どうなった?」と、問い掛けてくるのだ。

 生真面目に。
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by y.k-ybf | 2005-05-30 10:56 | 映画 | Comments(0)

むしろ、レコード・プレイヤー、の、ようなもの。


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