新耳袋―現代百物語〈第10夜〉

新耳袋―現代百物語〈第10夜〉
木原 浩勝 中山 市朗 / メディアファクトリー
ISBN : 4840112819




 新耳袋の最新刊で、最終巻。

 とうとう終わってしまった。

 年一回のペースで発行されてきた新耳袋は、
 個人的にフジ・ロックと並ぶぐらいの、夏のピックイベントだったので、
 非常に残念である。

 新耳袋とは、簡単に言うと、怪談集だ。
 そーゆーのを読んでいると、
 怖いものが好きなのかと言われるが、滅相もございません。
 怖いものなど大の苦手である。
 幼少の頃など、
 オバケ屋敷に入る前から、怖くて逃亡したほどである。
 富士急ハイランドでな。
 一方で、
 変なものや変わったものが大好きで、
 その好奇心が恐怖を凌駕してしまってる、わけなのだろう。

 新耳袋の魅力は、
 逆に返すと、詰まらなく、足りない、他の恐怖モノの理由を浮き彫りにする。
 と、
 えらそうに話すことでもないのだが、
 おどろおどろしい効果音や、嫌悪感に触れる歪な物体を出せば怖いだろうと、
 いまだにおもいこんでいる輩がいる。
 それは爆竹を鳴らして脅かしているのと変わりなく、
 古い怪談を焼きなおしているのと一緒だ。
 恐怖とは、
 何も異世界ではなく、未知の生物でもなくて、かまわない。
 むしろ定められたレール、限られたスペースのほうが、
 恐怖は活きるし、そもそも恐怖とは日常に潜んでいるものだ。
 おおまかに言うと。

 そのあたりの意識が高いのは清水崇監督で、
 彼は、
 いわゆる「柳の影」の使い方が上手いし、それで一本撮れることも知っている。
 つまりは、
 怪談はホラーである必要はないし、
 ようは、
 オハナシでなくていいのだ。
 脚色や、ドラマチックであることは、
 ストーリー的には成立するが、恐怖の因子は比例して減少する。

 映画やドラマにとってジレンマのような話だが、
 そのあたりをうまく放り投げたのが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』で、
 見事に作っちゃったのが『リング』であった。

 何か、ベタな例えだが。。。

 特に『リング』は、映画そのものが都市伝説になりそうなほどの秀作なわけだ。
 (続編やら、リメイクやらが、一作目を越えられないあたりが、分かり易い。)

 新耳袋は、とにかく削ぎ落としてあるし、加えていない。
 短いもので、1ページに充たないものもある。
 耳に入る部分と、語れる部分、インとアウトを計算してある。
 それは語り継がれるためであると本の中でも説明してあるが、
 想像はふくらむし、その分、妙な説得力が生まれるし、
 説教臭くもなく、結果、濃い恐怖が残る。
 匙加減が妙で、
 何より読みやすく、語りやすい。

 祖父江慎の装丁も、ステキ。
 カバーをめくったら、毎度毎度やられています。


 最後になるが、
 一番好きな話は、四巻の「山の牧場」の話だ。
 これ、UFOの話なんだけど、
 間違いなく「怪」談なわけで、完全にある域を超えた話である。

 そしてそれを、
 わたくしは、友人へ何度となく楽しげに話すわけだが、
 拙い喋りのそれは、友人にとって、ちがう意味で「怪談」で、あるのだろう。
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by y.k-ybf | 2005-07-19 17:57 | 本棚 | Comments(0)

むしろ、レコード・プレイヤー、の、ようなもの。


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