あの鐘を鳴らすのは。『クリード チャンプを継ぐ男』。
2016年 01月 11日
最期の最後だった前作『ロッキー・ザ・ファイナル』が奇跡的な快作だったし、
世間の評判は芳しくない『リベンジ・マッチ』も、
個人的には「もう一つの完結編」としてアリだとおもっているので、
蛇足な一作にならないかと、不安の方が大きかった。
しかしコレがねー、
年老いたロッキーの姿には、
あの心優しいチャンプが今、
家族も友も亡く、思い出の街フィラデルフィアに独りで暮らしている。
愛妻エイドリアンと、いつも手を焼きながらも兄のよーに慕っていたポーリーのお墓を訪ねるシーンは、とくに感慨深い。
おそらく日課のよーに、彼はこの場所へ足を運んでいるのだろう。
ロッキーのレストランや、ミッキーのジム、
かつてのライバルの息子をボクサーに育てるとゆープロットは、
シリーズに沿ったシンプルな内容で、
つまり全編ノスタルジィ頼りな作品なのかとゆーと、そーではなくて。
むしろ新章と呼ぶべき、フレッシュな物語なのですよ。
アポロの愛人の子として生まれたアドニスは、
母を亡くし一時期孤児となるが、アポロの妻メアリーに引き取られ、養子となる。
不自由な生活から解放され、安定した人生も目前にありながら、
父の存在、
それだけではないことを、
恋人となる歌手のビアンカに代弁させる構成が、素晴らしい。(当然、裕福な環境なども関係なく。)
プロの舞台に立てば、
これはまさに現在の若い世代が抱えている問題そのもので。
偉業なんてものは既に成し遂げられている。
記憶と記録のアーカイブは満杯で、
そんな疑問にハッキリと、
やるんだよ!
と答えるのが、この『クリード』とゆー映画なのだ。
壮絶な試合でマットに打ち倒されたアドニスが、
薄れる意識の中、
走馬灯のよーに巡り辿り着く、あの男の勇姿。
満身創痍で立ち上がるアドニスの姿に、問うことなど何もない。
ついに流れるあの旋律と共に、
新しい世代へ、
魂が受け継がれた瞬間である。
この作品に重ねられるものは少なくない。
そこは町山智宏さんの解説に詳しいので、お任せするとして。
76年に公開した『ロッキー』と、
翌年の77年に公開した『スターウォーズ』が、
奇しくも15年とゆー同じ年に、
(形こそ違いながらも)新しく物語を再生させた偶然に、特別な想いを馳せるのでございますよ。
映画って、フシギなもんだな、と。)